マーケットトピックス R1.5.30

*世界経済低迷の最大原因・中国が退場すればデフレが終わる。(*現代ビジネスより。抜粋しています。)

*現代世界経済の最大の問題は過剰供給である。

 ここしばらくの日本と世界経済の低迷の最大要因は、明らかに供給過剰である。デフレであるということは、物を買いたい人よりも売りたい人の方が多いから起こる現象である。現在「貿易戦争」と呼ばれ、世界を騒がしている動きも「需要と供給」という経済の基本原則と「価格支配をもくろむ動き」を合わせて考えるとスッキリするはずである。 

*生産性の向上は身を滅ぼす時がある。

 そもそも、世界経済における供給過剰はどのようにして生じたのか?もちろん、製造技術、特に日本製を始めとする工作機械の品質が格段に向上し、製造機械さえ設置さえすれば、どのような国で誰がやっても製品(特にコモディティ)を生産出来るようになったことがあげられる。例えば、農産物は現在基本的には生産過剰で、一次産品(コモディティ)をいくら頑張って生産しても、なかなか豊かにはなれない。農産物を生産するプランテーションと貧しさのイメージが密接につながっているほどである。

 農産物同様、家電や半導体などの工業製品もコモディティ化している。日本で家電や半導体のビジネスが苦しんでいるのは、経営者の資質や従業員の働きぶりの問題というよりも、産業そのものがコモディティ化した必然的結果なのである。生産性の拡大は、個々の企業にとっては正しいように見えても、市場全体としては泥沼にはまる典型である。

*冷戦後、共産国は先進資本主義諸国に寄生した。

 共産主義というのは、極めてシンプルに表現すれば「民主主義、自由主義への移行を拒絶し、かつての農奴制・専制君主制度に戻ろうとする思想である」 共産主義の最も重要な思想の一つに「私有財産の否定」があるが、これがまさに農奴制・奴隷制の象徴である。奴隷や農奴は牛や馬と同じように私有財産をまったく持たなかった。ご主人様の所有物であるから、その持ち物はすべてご主人様のものであるということだ。これは、共産主義国における人民が共産党の奴隷であるということの証しである。

 普段あまり意識されないが「私有財産が不可侵」であるという原則が、民主主義の根幹をなすのであり、私有財産を否定する共産主義が「反民主主義」であるのはある意味当然である。

*中華人民共和国が最大の成功者  

 1991年のソ連邦が崩壊し「共産主義は終わった」と思われたが、しかし実は共産主義国家は先進資本主義・自由主義諸国との貿易の門戸を開き、彼らに寄生するようになった。まるでカビが胞子をまき散らして仲間を増やしていくかのようである。ソ連邦崩壊時、共産主義国の中で最も危機意識を持ったのは共産主義中国に違いない。30年前の1989年6月4日に天安門事件があった。

 その天安門事件の危機を乗り越えて、その10年後、「改革・開放」という経済だけの自由化を唱え、その後の発展を導いたのは「と小平」である。共産主義中国は、国内における「現代の農奴制・奴隷制度」を維持しながら、WTO加盟による自由貿易の恩恵を得ることが出来るようになり、改革・開放を40年も続けることが出来たのだ。

*米国の堪忍袋の緒が切れた。

 しかも、2009年からは共産主義中国に極めて「融和的」な民主党のオバマ氏が大統領を務めた。まさに「やりたい放題」であり、その間、先進資本主義国は、リーマンショックの後遺症と共産主義中国を原因とする不公正な取引による「供給過剰」というダブルパンチをくらった。そこに登場したのが「怒れる米国民」を代表するトランプ大統領である。彼の第一の目的は、共産主義中国とずぶずぶの民主党政権時代に、ずたずたにされた米国の安全保障を立て直すことである。特にサイバー戦争では、米国がかなり不利な立場に追い込まれているから、ファーウェイをはじめとする中国フロント企業やその背後に控えているハッカー集団などが最大の攻撃ターゲットだ。

 もちろん、中国が不公正な貿易で巨額の利益を得ていることも阻止したい。軍事力の背景に経済力は欠かせないからだ。だから「米中貿易戦争」に交渉の余地はなく、このようなことは、中国が米国とならぶ核大国になってしまったら出来ないから、今回がラストチャンスであり、米国が譲歩することはない。

*中国が崩壊しても大丈夫なのか。

 短期的な混乱は別にして、コモディティを世界に垂れ流す中国が退場することは、世界経済にとってプラスである。言ってみれば、中国は世界の下請工場の一つにしか過ぎない。あるいは、安い労働力で部品を組み立てる受託会社だ。徴用工問題に関する韓国への制裁措置の一つとして、工作機械などの禁輸が議論されるが、中国のハイテクを含む製造業も、日本や米国のすぐれた「部品・ソフト」なしでは成り立たない。

 そもそも、世界中でインフレが待望されているのだから、中国製品が市場から退場しても製品価格が上昇するのは朗報である。また、価格が上昇すれば、国内での生産も可能になり、死んだも同然の日本の家電メーカーや半導体メーカーに喜ばしい効果をもたらすかも知れない。これまで、共産主義中国などが、日本を始めとする先進諸国の労働者が受け取るべきであった利益を横取りしていただけのことなのである。

 つまり、中国が世界市場から退場することはよい兆しである。実際、1989年のベルリンの壁崩壊までは、共産主義国が世界市場から切り離されていたことによって、先進資本主義国は繁栄を謳歌していたのである。